2011-01-01から1年間の記事一覧

藤原保明 (2010) 『言葉をさかのぼる 歴史に閉ざされた日本語と英語の世界』開拓社,東京。

34 (1d) city, cookie 語末のy, ieの音価について 『文法と発音』p. 61 (2a)などの「語末は[i(:)]の緊張母音(tense vowel)(英国では[ɪ]にもなる)であるが、(2b)のように接尾辞が就くと[ə, ɪ]の弛緩母音(lax vowel)であって、[i(:)]ではない(ただし-nessが…

金水論文総括、代名詞の束縛変項照応

金水論文総括 (28) b, cは著者は文法的としているが、文法的とは思えない。 (30)-(31)について 「三回以上そこの自動車会社の車を買った人に、どの自動車会社も年賀状を送っている」は、(31b)よりも良いと思われるが、この例の上山理論での位置づけはどうな…

日本語の受け身文 原田論文に思うこと

『ガイドブック日本語文法史』 第4章 1.上代語 助動詞「(ら)る」に加えて、「ら(ゆ)」も用いられた。 (1) か行けば人に厭はえかく行けば人に憎まえ(万葉804) 2.日本語受動文のタイポロジー−直接受動文と間接受動文 (2) ありがたきもの。舅にほめら…

近藤泰弘(2000)について

近藤泰弘(2000)『日本語記述文法の理論』くろしお出版,329-254ページ)に目を通したので簡単に報告します。上掲書では、準体節(末尾が用言の連体形で、全体として名詞節となっているもの)を次のように分類しています。 ①同格準体 (=石垣「作用性名詞句」…

Watanabe (2002) Loss of Overt Wh-Movement in Old Japanese

目標 Chomsky (1995)とChomsky (2000)の比較検討。wh-featureは解釈不可能であるか?

日本語のnegative concord

以前に読んだ渡辺論文を掲載した本の第9章に 言及がありました。要約すると以下の通りです。(番号は原論文のもの) (17) Q: 何を買ってきたの? A: 何も。 上の会話で返答の「何も。」は単独で否定の意味を持つ。だから 「何も買ってこなかった。」は2つあ…

野村剛史論文

野村剛史(2011)『話し言葉の日本史』吉川弘文館 文献資料から「話し言葉」を再構しようというユニークなアプローチの本で、連休中に2/3ほど読んだのですが、例の上代語の語順についての言及もありました。 =================== ……係り助詞の「カ・ゾ・ヤ」が…

S. -Y. Kuroda, On the Syntax of Old Japanese

3. Old Japanese 3.1 Sentence types and kakari musubi 独立文では、動詞は終止形、連体形、已然形のいずれかを取る。標準的には終止形であるが、係り結びにおいては動詞は連体形や已然形を取る。 3.2 Case marking 3.2.1 Bare DPs as case marked subjects…

外池論文について 和歌の解釈と論文の論旨

さて、先週の読書会で保留させていただいた、和歌の解釈です。 (6)a.海の底 沖つ白波 龍田山 いつか越えなむ 妹があたり見む 「沖の白波が立つ、その立つという名の龍田山をいつ越えられることか。早く妻の家のあたりを見たいものだ」(『新潮日本古典集成』…

平安時代語における「行く」「来(く)」の使い分け

『伊勢物語』筒井筒から さりければ、かの女、やまとの方を見やりて、きみがあたり見つゝをゝらむいこま山雲なかくしそ雨はふるともといひて見いだすに、からうじてやまと人、こむといへり。よろこびてまつにたびたびすぎぬれば、きみこむといひし夜ごとにす…

ハンガリー語の基本語順

ハンガリー語の基本語順 International Encyclopedia of Linguistics (ed. Frawley, W. J.)に記載があり(第2巻のHungarianの箇所)。 基本語順はtopic+focus+finite verb+any other items なお、topicとfocusは両方とも文強勢を受け、focusの強勢の方がよ…

渡辺明『ミニマリストプログラム序説』 第7章古代日本語のWH移動

7.1 万葉集の疑問文 主張:万葉集の時代には英語と似た形でのWH移動が存在していたが、平安時代にいたり、これが消失する。 (4) 門立てて 戸もさしたるを いずくにか 妹が入り来て 夢に見えつる 下の句の解釈:あなたはどこから入ってきて夢に姿を見せたのか…

親族関係語の通言語的・歴史的比較

1.英語の場合 兄弟姉妹:brother, sisterは長幼を問わず、性別のみ。また、いずれも本来語 現代英語のuncle, auntはいずれもフランス語からの借用語である。このような基礎語彙が借用されるのは意外に感じられるが、それはさておき、uncle, auntの借用され…

「か」の現代日本語における性質

1.二つの立場 (A)名詞句説…(1)a.は(1)b.と等価な表現で、格助詞が省略されたもの。 (B)非名詞句説…(1)a.は単なる助詞の省略ではない。 (1)a.どこにあるか教えてください。 b.どこにあるかを教えてください。 2.非名詞句説の根拠(江口1998、藤田2000) ?…

黒田成幸「主部内在関係節」よく分からない箇所

p. 32, l.-5の「節頭」とは? (42) 記者が車から降りてきたのが電話した。 (44) あのとき記者が車から降りてきたのが電話したに違いない。 (44)の方が(42)よりも容認度が高いが、これは談話的な要因かもしれない。(44)の「が」はいわゆる総記の「が」であろ…

blind childrenにとってのlook

Tsujimuraに引用されていたGleitmanの研究(言語習得のものです)ですが、以前読んでいたことをすっかり忘れていました。目の見えない子どもにおけるlookとtouchの認識の違いが言及されていました。それによると、目の見えない子どもは実験者から"Touch, but…

高橋保夫 (1997), Swam, M. Practical English Usage, OUP.

高橋、Swan p. 65 the number ofの後では、本来あるべきtheが落ちる。 (1) The number of unemployed is rising steadily. (the +形容詞のthe) (2) The numbers indicate the number of nearest neighbors. (BC G20-0630) (最上級のthe) (3) Are your expens…

Kato, Y. (2001) Sophia Symposium on Negationにおける口頭発表

1.NPIに観察される様々な事実 Kato (2001) Sophia Symposium on Negationにおける口頭発表C-command (9) a. No one has hit anyone. b. Anybody has been hit by no one. (10) a. Mary didn’t see anything. b. Anybody didn’t come. (11) a. I gave no on…

中尾俊夫 (2003)『変化する英語』ひつじ書房,東京。

中尾 (2003:67-77) PEの特徴の1つに自動詞〜他動詞の混用がある。とくに能格動詞(ergative verb: break, open)、中間動詞(middle verb: cut, translate)などは広く行われている。 He smokes cigars ~ He smokes He drinks a beer ~ He drinks He expects a …

Culicover, P. and R. Jackendoff (1995) “Something else for the Binding Theory,” Linguistic Inquiry 26, 249-275.

X elseの位置づけ:syntacticなanaphorかそれとも語用論的な処理ができるのか 参考文献 Culicover and Jackendoff (1995) “Something else for the Binding Theory,” LI. (1) Mary thinks that someone else will win. この文は2つの解釈がある。 解釈1:s…

Jespersen, Essentials of English Grammar

Chapter X 倒置の起きる頻度 negative: 必ず起きる locative, temporal: 代名詞主語の場合はinversionは起こらない。 manner, instrumental: 起きても起こらなくても良い。 Chapter XI 動詞の自他 i) 省略(文脈から自明な場合) He plays the violin. He pla…

現代英語の否定 −allとのinteraction

『ジニアス英和大辞典』 s.v. all All children do not like apples.(部分否定と全否定両方あり) He did not answer all the questions. (部分否定と全否定両方あり)

T. Givon (2009) "Multiple routes to clause union: The diachrony of complex verb phrases"

節融合の2タイプ Type 1: The complement clause begins as chained (conjoined) to the main clause, and the chain then condensed into a serial verb construction. Type 2: A finite main clause and a non-finite (nominalized) object clause undergo…

Anderwald, L. (2002) Negation in Non-Standard British English: Gaps, regularizations and asymmetries, Routeledge, London. Chapter 5 Negative concord

私的評価:従来の見解では、NCは社会階層を反映したものとされ、地域差はないとされてきた。本研究は、NCの地域差を示したことで評価できる。BNC以外で、質問紙票などを使って、社会階層の変数を除去した研究で、本論の結論をバックアップする必要はあると思…

住吉誠 (2005)「遊離付加詞としてのthat節」『英語語法文法研究の新展開 』田中実,神崎高明(編), 27-33,英宝社,東京。

遊離付加詞としてのthat節(1) What did you think would happen if you told me? That I’d tell everyone at the store? I wouldn’t have, Mike. Don’t you know that?斜字体の文は、一見省略構造のように思えるがそうではない。(4) What were the religious…

Ritter, Elizabeth and Sara Thomas Rosen (1996) “Strong and Weak Predicates: Reducing the Lexical Burden,” Linguistic Analysis, 26, 29-62.

causativeの主語(causer)は、agentと異なり、動詞の表す行為を行わない。 (6) a. The psychologist ran the rats through the maze. --> The psychologists doesn’t run. b. The lion-tamer jumped the lions through the hoop. --> The lion-tamer doesn’t …

Borkin, A. (1984) Problems in Form and Function, Ablex Publishing Corporation.

<接続詞の省略と抜き出し> (Borkin 1984: 84) 副詞句 (45) a. ?Tomorrow, I think that I’ll leave. b. Tomorrow, I think I’ll leave.主語 (46) a. Mary, I believe that is genuinely ill, but John, I believe that is only fooling. b. Mary, I believ…

新英文法選書『副詞と挿入文』

「しかし、純粋に動作様態しか表さない副詞もあり、それらは動詞の後ろのうちに限定される。たとえばHe ran fast.に対してHe fast ran.は非文法的である。」について 新英文法選書『副詞と挿入文』p. 46ff 「様態付接詞(=様態副詞)は、情報構造上、焦点あ…

Jackendoff, R. (1992) "Mme. Tussaud Meets the Binding Theory," Natural Language and Linguistic Theory 10, 1-31.

1.現代英語 状況:リンゴ・スター(ビートルズのドラマー)と一緒に、ロンドンのマダム・タッソーの館(蝋人形館)を見物している。(8) All of a sudden I accidentally stumbled and fell on Ringo. この文は多義(リンゴ本人に倒れかかった、リンゴの人…

Fuji, Masaaki (2003) "Except and except for: A Diachronic Perspective," Empirical and Theoretical Investigations into Language:A Festschrift for Masaru Kajita, Kaitakusha, 125-137.

exceptとexcept forの違い。 違い1 exceptは、係る名詞が「すべて、まったくない」を意味する数量形容詞によって形容されている必要があるが、exceptにはそのような制約はない。 (2) {Every boy / All boys / No boy / *Most boys / *Few boys / *A lot of …