金水論文総括、代名詞の束縛変項照応

金水論文総括
(28) b, cは著者は文法的としているが、文法的とは思えない。
(30)-(31)について
「三回以上そこの自動車会社の車を買った人に、どの自動車会社も年賀状を送っている」は、(31b)よりも良いと思われるが、この例の上山理論での位置づけはどうなるか?

<束縛変項照応>
金水論文、p. 66、左から4行目で「英語の現象などで、単数代名詞では束縛変項照応の
解釈がが取れない文でも、複数代名詞に変えると、結果的に束縛変項照応に
類似した解釈が取れることがある」
 この箇所はHoji論文でReinhart論文が言及されており,Reinhart論文を見てみました。Reinhart (1983) Anaphora and semantic interpretation, p. 116-117です。 (17) a. *The guy who read every book in the library says that it is absolutely boring. b. The buy who read every book in the library says that they are absolutely boring. (17a)でitがevery bookにc-commandされていないにもかかわらず、束縛変項照応が不可能なのはなぜか、そして(17b)で文法性が改善しているのはなぜか、という問題意識です。(17b)と同趣旨でもう少し簡単な例文にすると、

Every boy failed the exam. Should we give them another chance?

ここではevery boyとthemに注目です。文をまたいでいるので、束縛変項照応はあり得ません。なぜ文法性が問題ないかというと、文を超えたディスコースでevery boyがthemの先行詞となっているからです。(ちなみにevery+Nをthey, their, themで受けるのは問題ありません。)