「か」の現代日本語における性質

1.二つの立場
(A)名詞句説…(1)a.は(1)b.と等価な表現で、格助詞が省略されたもの。
(B)非名詞句説…(1)a.は単なる助詞の省略ではない。
 (1)a.どこにあるか教えてください。
   b.どこにあるかを教えてください。

2.非名詞句説の根拠(江口1998、藤田2000)
?格助詞の挿入が不可能な例がある
 (2)どうしたらいいのか、全くため息が出る。
 (3)どれほどの衝撃があるか、直接ぶつけてみた。

?格助詞の省略が不可能な例がある
 (4)a. いつ本当のことを話すかが重要だ。
   b.*いつ本当のことを話すか重要だ。
 (5)a. 人間と動物を区別するしるしとして、道具を作るか作らないかが考えられている。
   b.*人間と動物を区別するしるしとして、道具を作るか作らないか考えられている。

?「〜か」節は連体修飾を受けることができない

 (6)a. 直美が知りたがっていたどうすればよいかを教えてやったよ。
   b.*直美が知りたがっていたどうすればよいか教えてやったよ。
 (7)a. 直美が知りたがっていた情報を教えてやったよ。
   b. 直美が知りたがっていた情報、教えてやったよ。

?格助詞が後接しない場合、主格の「が」を「の」に置き換えられない。

 (8)a. 作戦が成功するか否かがなお不明である。
   b. 作戦の成功するか否かがなお不明である。(やや文語的)
   c. 作戦が成功するか否か、なお不明である。
   d.*作戦の成功するか否か、なお不明である。

?格助詞が後接する「〜か」節には二つの解釈があるが、格助詞を伴わない場合は一つの解釈しかない

 (9)a.どのようにして催しを宣伝するかを提案した。
    ⇒?「どのようして催しを宣伝するか」という問題についての解答
      にあたる内容が提案された
     ?「どのようして催しを宣伝するか」という議題・問題点が提案
      された
   b.どのようにして催しを宣伝するか提案した。
    ⇒?のみ

■3.非名詞句説における「〜か」節の位置づけ

・江口(1998)…遊離構文をとる数量詞・不定詞と類似したもの
・藤田(2000)…係り結び的な応答的意味関係(「答えられ、解決されるべき」
      懸案の提示+「答えられ、解決される」という点でどうなのか)

■参考文献

江口正(1998)「日本語の間接疑問節の文法的位置づけについて」『九大言語学研究室報告』19
藤田保幸(2000)『国語引用構文の研究』和泉書院