Stefanowitsch, A. (2013) "Variation and Change in English Path Verbs and Constructions"

 英語はTalmyの類型論によればsatelite frame 言語で動詞は典型的にmanner conflatingであるとのことだが,英語の動詞を仔細に観察すると,本来語にpath conflating verbsがあり,頻度が高いものが見られる。英語はpath conflating verbsを受け入れる素地があるように思われる。

 このことは,借用語においてもそうである。例えば,enterはpath conflating verbsであるが,英語に借用され定着している。ただしenterは他動詞であり,この点がフランス語の同根の動詞と異なる(フランス語のentrerは自動詞)。英語に借用された当初も自動詞であったのが,他動詞になっている。

 この自動詞から他動詞への変化であるが,場所移動の意味と比喩的な意味の使い分けと連動しているのが面白い。enterの他動詞が発生当初,典型的な他動詞の意味を持っていたのも興味深い(典型的な他動詞は主語agent,目的語patientである。enterの他動詞は軍勢の移動であり,移動先に多大な影響を及ぼす)。

 ただし,なぜそもそも他動詞用法が発生したのかが不明。