近代英語における文法的・構文的変化 15世紀の動詞派生前置詞

15世紀から20世紀までの英語について,世紀ごとに変化を記述している。先行研究から出発し,コーパスやテキストを通して英語の軌跡を追っている。どの世紀についても句動詞,仮定法,補文がトピックに入っているのが特徴である。

 

 動詞派生前置詞concerningは,がんらい,フランス語のconcerner(言及する),ラテン語のconcernere(関係する)を語源とする,中英語の借用語concernenの現在分詞である。

 この語はMEDによると2つの意味がある。一つは,人について「認識する,注意する,心配する」の意味 (Of persons: (a) to discern or perceive (sth.); also, observe; (b) to heed (sth.), be concerned about.)。もう一つは,物について「関係する」の意味 (Of things: (a) to bear upon (sth.), have reference to, be concerned with; (b) to be a matter of concern to (sb.).)である。ラテン語の原義は,物を主語とする場合に感じられる。「認識する」の意味は,フランス語の「言及する」の換喩であろうか。

 15世紀にしてPEの語法が成立していたという。評釈文に多い。現在分詞の後置修飾用法との関連はどうなっているのであろうか,疑問に思った。

 動詞派生前置詞touchingは,フランス語借用語touchenの現在分詞に端を発する。as touchingが31例と,かなり見られる。as concerningはないのだろうかと疑問に思ったが,OEDを参照すると,as concerningが記載あり。。

 動詞派生前置詞duringは,フランス語durerの現在分詞である。15世紀以前から定着していたことが資料から読み取れるという。

 

 これらの3つは15世紀にして既にPEの語法であったという。借用は12~14世紀ごろであろうから,高速度の文法化ではないだろうか。あと,冗語的と思われるasがtouchingのみで現れているという。asが何らかのdisambiguationの働きを担っていたのであれば,なぜtouchingだけ問題になるのか不思議に思う。