歴史的な意味変化と補文構造-requireにおける「頼む」と「要求する」の併存

requireは、がんらいaskと同じく「尋ねる、頼む」を意味した。その後、意味が強くなり、PEでは「要求する」の意味を持つ。この意味変化は補文の形式と結びついているが、過渡期についてはどのように考えるべきか問題が残る。

 

  (i) Requyryng our lord with salte teris that..he wold delyuer them of this pestylence. (1483 Caxton Gold. Leg. 196 b/1)

 (ii) [They] notefyden vnto the quene, how the sayd kyng had requyred her in maryage. (=1b)

 

(i)においては王が目的語として行為を受ける側であり,(ii)においては王は行為者である。(i)においては丁寧さの考慮からより強制力の弱い意味に解され,(ii)においては権力者の行為であることから,強制力が高いと解されるであろう。「依頼する」と「要求する」の意味の区別は,おそらく「依頼する」の意味が廃れるまでは,語彙意味的なものというより,上述のような文脈に依存した語用論的な区別であったのかもしれない。実際,この2つの意味に共通して補部にNP to VPやthat節が現れるが,この共通性はこれら2つの意味の間に関係があったためかもしれない。