アカギ 視点と描写

福本伸行氏による麻雀漫画『アカギ』。主人公赤木しげるが、中学生の頃から莫大な金を賭けたり、はたまた命を賭けて対局するという麻雀漫画である。冷静なアカギと対照的に、周囲の大人たち(南郷や安岡ら)が振り回されるというシーンが続く。

この漫画で面白いのは何と言っても心理描写と共に精緻に描かれる対局シーンである。そしてこの対局シーン、アカギの対局を観戦する南郷や安岡はアカギのツモや打牌の度に一喜一憂するのである。彼らの一喜一憂はアカギの賭け麻雀で南郷や安岡、そして仰木も金や身体部位を賭けていることを考えると極めて不自然なことである。なぜなら、アカギの一挙手一投足に一喜一憂することは、敵に手の内を明かすことに繋がるからだ。リアルに考えるとそう言うことになる。

リアリティ的には一喜一憂などあり得ないなら、それは漫画の描写の上での効果と言うことになる。その効果は読者がアカギの対局に共感するための取っ掛かり、つまり、読者が漫画世界に入り込んで、対局の観戦者となり、アカギの凄さを追体験することにあるのだろう。