andで始まる文

衣笠忠司 (2012)『マンガ対訳本から学ぶ日英対照英語表現研究』開拓社,東京。

思わぬところに言及があった。衣笠は,andで文が始まるかどうかは問題にしておらず,andのtextualな用法,間主観的な用法を取り上げている。andで文が始まるということは,andが談話標識化していることを意味すると思われるので,検討が必要と思われる。

まず用法の総論から。

「andは,先行する他人の発話に付加された場合,その発話との関連でものを言っていますが,これには2種類あって,単に文を付加・追加する場合と,苦言・心情を付け足す場合があります」(p. 131)

 

用例

付加の用法

自分の発言に対する付加

(5)(男性が)うちの女房ときたらそうじせんたくは大きらい

   My wife -- she hates cleaning and doing the laundry.

 食事も毎度インスタントの冷凍食品ばかりで…

   And our meals are always precooked frozen food.

 

相手の発言に対する付加

(13) (夫が)きみはよくきがつくなア!

    You're really sensitive!

 (妻が)あなたこそおもいやりがあるわ!

   And you're really thoughtful!

夫婦が互いに褒めあっている。

 

前言に苦言・心情を付け足す,反発・反論する

(28)(娘が母親について)アーア 一ちょうらを着ていったのに!

   Oh dear!  And she's wearing her best clothes!

雨が降ってきて,せっかくの服が台無しであるとの心情を表現している

(30)(釣り竿をダメにされて,男性が)

  ンモー 買ったばかりのつりざおを~~

   Such a waste!  And I just bought this fishing rod.

(35)(押し売りが)やいやい だれかいねえのか

   Hey, is there no one at home?

  (おばさんが)いたらどうしたってんだよ

   And what if there is?