Brunner, T. (2014) "Structural Nativization, Typology, and Complexity: Noun Phrase Structures in British, Kenyan and Singaporean English," ELL 18, 23-48.

世界諸英語に見られる,英米の英語とは異なる文法的特徴を説明する際,当該の諸英語が話されている地域の言語からの影響と単純化が要因としてあげられることが多い。しかし,個別的なケースの説明にとどまっていて,様々な接触場面を比較する試みはない。そこでこの論文は,世界諸英語を生み出す言語接触の例を比較する。特に,英語と接触する言語が系統的に無関係の言語であるケースを取り上げる。

データ シンガポール英語とケニア英語のNP内における修飾パターン(シンガポール英語の話される地域の言語はhead-finalであり,ケニア英語が話される地域の言語はhead-initialである)

観察のポイント

英語のNPでは前置要素による修飾と後置要素による修飾の2パターンがある。

a very civilized Kenyan(前置修飾パターン)

a sense of environmental awareness(後置修飾パターン)

イギリス英語のデータと比較して,シンガポール英語とケニア英語ではどちらのパターンが多いのか調べたのがこの論文。結果としては,シンガポール英語では前置修飾パターンがイギリス英語よりも有意に多く,後置修飾パターンがイギリス英語よりも有意に少ない。ケニア英語ではその逆である。