山崎雅弘 (2024)『詭弁社会 ―日本を蝕む”怪物”の正体』祥伝社。

 まず全体の構成であるが,第一部は近年(安倍菅自公政権に始まる)詭弁の具体例を整理し,第二部は詭弁の害悪を説明し,第三部は近年の詭弁が昭和初めから第二次世界大戦敗戦までの政治に見られる詭弁と軌を一にするものであることを指摘している。

 第二次安倍政権以降の自民党が嘘と詭弁にまみれたものであることは,最早,政治に少しでも関心を寄せているのであれば,火を見るよりも明らかなことであるが,詭弁が社会を蝕み,弱者を虐げるものであることを,共時的・通時的な観点から明らかにしているのが本書の特徴である。

 本来であれば,本書が為していることはマスコミがやっているべきことであり,今日のマスコミの怠慢ぶりには心底呆れるほかない。しかし,テレビや大新聞の言うことを真に受ける人が多いことは動かしがたい事実である。そこで彼らの不作為に対して声を上げることが非常に重要である。1人でも多くの人が本書を手に取り,自公政治に対して疑問を持つことを心より期待する。

近代英語における文法的・構文的変化 仮定法の衰退

 英語史の定番的説明として,法助動詞は屈折語尾の仮定法の衰退を埋め合わせるものとして発達したというものがある。この説明の帰結として,if節内で法助動詞が使われるという,PEの観点からすると意外な現象が示唆されるが,実際そのようである。15世紀,16世紀,17世紀を通して,if節で法助動詞が見られるとの調査報告である。

 

15世紀の例

Than was the mater put in my Lord of Norwych Alnewyk to say if he myghth be trety bring it to an ende. (Kempe, xxv, 59)

 

16世紀の例

I warrant, if he will mine example follow. (Ralph 1.4.6)

 

17世紀の例

なぜかifを調査していない。

... upon condition that he shall not alien, is good, in respect of the confidence. (1651 Reports of diverse choice cases in law ... EEBO)

 

Stefanowitsch, A. (2013) "Variation and Change in English Path Verbs and Constructions"

 英語はTalmyの類型論によればsatelite frame 言語で動詞は典型的にmanner conflatingであるとのことだが,英語の動詞を仔細に観察すると,本来語にpath conflating verbsがあり,頻度が高いものが見られる。英語はpath conflating verbsを受け入れる素地があるように思われる。

 このことは,借用語においてもそうである。例えば,enterはpath conflating verbsであるが,英語に借用され定着している。ただしenterは他動詞であり,この点がフランス語の同根の動詞と異なる(フランス語のentrerは自動詞)。英語に借用された当初も自動詞であったのが,他動詞になっている。

 この自動詞から他動詞への変化であるが,場所移動の意味と比喩的な意味の使い分けと連動しているのが面白い。enterの他動詞が発生当初,典型的な他動詞の意味を持っていたのも興味深い(典型的な他動詞は主語agent,目的語patientである。enterの他動詞は軍勢の移動であり,移動先に多大な影響を及ぼす)。

 ただし,なぜそもそも他動詞用法が発生したのかが不明。

岡田 (2018)「英語の補部形式と事態の統合について」

Givon (1993)の解題。

言語類像性の観点から近接性の原理を提案する。

 

近接性の原理

機能的,概念的,認識的に近い関係にある言語的事物は,発音記号レベルにおいても,時空間的に(発話として音声記号になる場合も,筆記内容として文字記号になる場合も)近い位置におかれる。(Givon (1993:970))

 

この原理を使って補文構造のスケールを検討している。

a friend of mineの起源

この構造は1300年頃の出現。起源は不明な点が多いが,英語本来の形式(外来でない)であり,one of my friendsで例示される構造と関係があるだろう。

an olde felawe of yours (c1375-a1400 Ch CT PardT (6)672)

a dear friend of the good Duke of Yorks (1595 Sh R2 3.4.70)