山崎雅弘 (2024)『詭弁社会 ―日本を蝕む”怪物”の正体』祥伝社。

 まず全体の構成であるが,第一部は近年(安倍菅自公政権に始まる)詭弁の具体例を整理し,第二部は詭弁の害悪を説明し,第三部は近年の詭弁が昭和初めから第二次世界大戦敗戦までの政治に見られる詭弁と軌を一にするものであることを指摘している。

 第二次安倍政権以降の自民党が嘘と詭弁にまみれたものであることは,最早,政治に少しでも関心を寄せているのであれば,火を見るよりも明らかなことであるが,詭弁が社会を蝕み,弱者を虐げるものであることを,共時的・通時的な観点から明らかにしているのが本書の特徴である。

 本来であれば,本書が為していることはマスコミがやっているべきことであり,今日のマスコミの怠慢ぶりには心底呆れるほかない。しかし,テレビや大新聞の言うことを真に受ける人が多いことは動かしがたい事実である。そこで彼らの不作為に対して声を上げることが非常に重要である。1人でも多くの人が本書を手に取り,自公政治に対して疑問を持つことを心より期待する。