大滝靖司 (2012) 「借用語における母音挿入の音韻論的解釈―共時的および通時的観点から―」『音韻研究』15, 35-42.

https://researchmap.jp/?action=cv_download_main&upload_id=28275

英語の語彙が日本語に借用された場合に起きる音変化,特に,母音挿入のバリエーションについて最適性理論の観点から分析した論文。挿入母音「ウ」はこれを入れないと日本語の音節構造として適格にならないとして処理。挿入母音「オ」は入力にない[ts]が生じることの回避。古い挿入母音の「イ」は直前の母音との[-back]素性の調和。

 

比較的古い借用で見られる挿入母音[i]については,口蓋化子音に後続する母音が前舌母音であることを求める制約(Palatal-front)で扱う。そして,通時的にこの挿入母音が[u]に変化したことは母音調和が起きなくなったことで説明する。和語でも母音調和が起きなくなった例はないのか?

 

Kubozono (2015:330-331)

Quackenbush and Ohso (1990)によるとして母音調和を提案。

keeki, dekkiとdokku, bukku, bakkuを比較せよ。[-back]素性が挿入母音にコピーされる。ただし,piiku, kikkuは[-back]素性がコピーされていない,例外となる。