Kawahara, S. (2006) A Faithfulness Ranking Projected from a Perceptibility Scale: The Case of [+VOICE] in Japanese

音声学が音韻論に影響を与えうるか,という命題がある。最近,音声学によって動機付けられた音声学的パタンがあるとの報告が多数出されている。これらの成果はOTを使うと自然な形で音韻理論に組み込むことができるのではないか。

音声学が音韻論に影響を持ちうる方法として知覚がある。これと関連して,OTでは,Steriade (2001a, b)のP-Map Hypothesisがある。この仮説は,交替形がありうる場合,交替が知覚的により明瞭な文脈の方が,不明瞭な文脈よりも交替が起きやすい,と述べている。本論の目標はこのP-Map Hypothesisに対して傍証を与えることである。

この論文は,日本語の借用語では,有声の重子音は,有声の単子音よりも無声化を起こしやすい。これを,有声の重子音の無声化は,有声単子音の無声化よりも知覚的なcueが卓越していないので,有声重子音は無声化しやすいと主張する。